食と農
B-9、深耕について
「深く耕す」
(前略)それからもう一つは、今年の成績でよく分ったのですが、深く耕すという事が非常によいのです。それは今まで長い間沢山やった肥料が、丁度稲の根が行くぐらいの所に固まっているのです。というのは今までは肥料をやるほど良いと思っていたから、なるべく根を肥料に近くするというやり方だったのです。それで今度は肥料からの悪影響を受けないために深く耕すのです。そうすると肥料の固まりの所が散らばりますから、つまり肥毒が薄くなるわけです。そのために非常に成績がよいのです。そういう工合に深く耕した所は、最初の年から三割くらい増産になってます。初年度からそういうふうですから附近の普通の農民には直ぐ分るので、オレもワレもと、ドンドン増えるのです。だから堆肥はなるべくやらない事ですが、絶対にやらなければなお結構です。ですから深く耕すという事だけで初年度から増産になります。(後略)
(御教え集27号 昭和28年10月5日)
自然農法も大分良くなって来まして、特に今年発見したと言うか、技術的の面についてです。私が原理を発見して自然農法というものができたのですが、技術面の方でだんだん良くなって来て、今年になって素晴しい方法を発見したのです。その一番の成績は初年度で五割増産した所があるのです。というのは深く耕すのです。一尺から一尺二寸ぐらいの深さにするのです。そうして天地返しというのをやるのです。そうすると成績が非常によいのです。それはどういうわけかと言うと、私は百姓ではないから、田に入らないから分らなかったのですが、今の日本の水田というものは、長年強い肥料をやるので、それがだんだん沈澱して肥料の層ができているのです。つまり肥料の壁ができているのです。それですから根が伸びる場合にそれに閊(ツカ)えてしまうのです。そうして土の養分を吸えないわけです。或いは、閊えなくても、その中に根が入っても、なにしろ土ではなくて肥料の固まりですから、稲が育たないわけです。それですから今までは初年度は減る事は滅多にないが――偶には減る事もあったが――平年作だったのです。そうして肥毒が抜けてゆくに従って年々増えてゆくというわけだったのです。ところが今言った深く耕すのは、肥毒の壁を突抜いて、土が上に出て来る事になると同時に、壁が壊れてその辺の土が平均して来るわけです。ですから肥毒の固まりのようなものは無くなって来るわけです。そこで充分稲が育つわけです。そのために初年度から大増産になるという事が分ったのです。その成績を上げた所は、今まで三俵ぐらいだったのが、今言うような方法でやって十俵とれる予定だという事ですから素晴しいものです。今までは総て内輪内輪に言っておいた方が間違いないから五割と言ったのです。前に言った“五カ年にして五割増産”という事は、ごく内輪に言ったのです。
(御教え集27号 昭和28年10月7日)
(前略)今までは、所によってですが一年目二年目から増収というのは滅多にないので、大抵うまくいって今までどおり、下手をすると一、二割ぐらい減る所があるのです。どうもこの点が面白くなかったのです。最初の年から増産にならなければ早く分らせるのに困るのです。よくお蔭話にあるように最初は黄色い色で、針みたいな細さで、隣近所から嘲笑されるという……これがどうもまずいのです。ところが今度発見した方法は深く耕すのです。一尺から一尺二寸ぐらいの深さにして、天地返しをするのです。それがために非常によくできるのです。今までとは断然違うのです。一番成績が良いのは初年目で五割増産した人があります。それで気がついた事は、つまり今まで長い間肥毒を沢山やって、田の面が肥毒のコンクリート、肥毒の壁ができているわけです。だから無肥料でやってもその壁に根がぶっつかるから思うようにいかないのです。それを深く耕すとその壁を突破る事になるのです。それで又いい事には、壁で蓋(フタ)しているから壁の下の方は良い土なのです。ですからそれを掘り返して天地返しをすると、肥毒の壁が粉々(コナゴナ)になって良いのと混じるから、肥毒の害というものは減り、そこでよく出来るのです。ですから初年目から幾らかでも増産するという事になったら、これは否応(イヤオウ)なしに信者でない百姓も大賛成して直ぐからでも始めます。その実例もできましたから、これを土台にして大いに宣伝をすれば、みんな簡単に分ります。(後略)
(御教え集27号 昭和28年10月16日)
「深く耕し、稲の株間を広く」
(前略)それから自然農法も今年は技術的に大改良をされて、今までは初年度から一、二年くらいというものは大した成績が上らなかったのです。初年度で多少減産になる所もありますが、大体は漸く平年作を保てばよいぐらいに思っていたのですが、今度中京の方の二、三の自然栽培で初年度から相当に増産になったのです。一番増産になったのが、初年度で五割増産した人があります。これはどういう訳かというと、最初から深耕したのです。それから稲の株間を広くしたのです。無論一本植えです。深く耕すのは大体一尺から一尺二寸ぐらいが適当してますが、それをよく考えてみると、今まで肥料がだんだん溜まって、つまり土の表、表土は肥毒の壁みたいになっていたのです。だから無肥にしても、稲の根は其処につかえて本当の土の養分を吸えなかったわけです。ところが深く掘るとその壁を突破ってしまうわけです。そうして下の良い土が表に来るわけで、つまり天地返しをするというわけです。それをやると、多少はその壁土が混じりますが、なにしろ壁を破ったのですから、平均されて大した害はないわけで、害が少なくなるのです。そのために成績がよいのです。そうなると稲がよく育ちますから、分蘖なども多くなります。それから株と株との間を広くしないと、葉の蔭になって根に天日がよく当らないのですが、間を開けると日がよく当りますから、つまり土が温まるというわけで、素晴しい出来になるのです。そういうようなわけで、これは一大改良です。そのために初年度から増産になるという事は大変な魅力ですから、これが分ればどんな農民でもやらずにはおられないという事になります。(後略)
(御教え集27号 昭和28年10月17日)
「耕土、時には浅く」
【お伺】岐阜県本巣郡の者ですが、水田であつて、四寸程までは土で下は岩盤であります。耕土が深い方が多く作れると云うので、裏作から耕土を深くしたのですが、実際に四寸位が適当か、或は未だ深く掘るべきか、御教示願います
。
【御垂示】之は出来る丈浅くする方がいい。深いと、根伸びの場合、岩盤に突当るから、成育が悪くなるからである。
(「地上天国23号 教えの光」昭和26年4月25日)