B-8、客土について
「客土について」
(前略)或る農村で客土をすると、非常に成績が良い。で、今年から全村に客土すると言う事が書いてありましたが、あれを見ても、良く解るんです。つまり、客土と言うのは新しい土ですからね。肥料のない土ですからね。新しい土を入れると増産になると言うんですから。それ丈でも解るんですよ。何しろ肥料迷信にかかつているからね。つまり、新しい土を入れないと、土の養分が減つた為に穫れないんだから、新しい土なら肥料分があるからと言う考えなんですから、実に――迷信と言うのは恐ろしいものなんですよ。それで結局、人間の病気と同じ様に、肥料は――人間が薬と思つて毒を飲むのと同じ様なもので、農業の方も、肥料――つまり作物に対して、栄養分と言う様に思つて、実は毒を呉れてやつて、そうして栄養を無くすると言う逆効果ですね。丁度同じ様なものです。(後略)
(御教え集6号 昭和27年1月15日)
(前略)越後で、四年目で平年作なんです。そういうのが二つあつたんです。他にはなかつたですね。越後丈です。それで昨日、あつちの――小川さんに聞いて見た処、解つたんです。そこの水田は、下が岩盤なんです。土の層が薄いんですね。そこで根張りの時に、下に行かない。その為に、昔から肥料を非常に多くやつた。土が少ないから肥料を目茶苦茶にやつた。ですから、肥料が多い為と、土が少ない為と、下が岩盤の為に、思う様に増えなかつたと言う事が分つた。そこで、私は客土をしろと云つた。そうすると土も厚くなるからね。そうする、と言つて帰りましたがね。今年は、大分農林省の方で、客土を奨励してますが、客土と言うのは、肥料のない土でしよう。無肥料の土を山から取つて来てやると増産になるんですからね。千葉県ですかね――山から取つて来てやると、非常に穫れたんです。客土は、千葉県が一番にやるらしいですがね。そのうちに段々穫れなくなつて来た。すると、農民は何う言う解釈をするかと言うと、土が古くなると、養分を吸いとられて、それで穫れなくなる。肥料と言う事を全然勘定に入れませんからね。そう言う考え方が非常な異いですね。間違の最もひどい訳ですね。(後略)
(御教え集6号 昭和27年1月26日)
「客土の考え方」
(前略)それからお蔭話の中で、技術的の事がありますが、これはあんまり必要ありません。今までのやり方でいいのです。それから土地によって非常に良く育つ所、つまり暖かい所、それからごく寒冷地という所は、種をまく時期も早くするとか遅くするとか、それは適宜に土地の状態に応じてやればいいのです。よく、あそこではこういうやり方だから、それに習おうと言ったところで、長く作った所は肥毒が非常に多くしみ込んでますから、そういう所は無肥にしても、肥毒をとるのに年限がかかるわけです。だからあんまり肥毒の多い所は客土したらいいのです。客土という事も、客土すると一時良くとれますが、これは肥毒がないからとれるので、そういうところの考え方が今までの農民は非常に間違っていた。今の農民は、一つ土を長くやっていると作物が肥料分を吸ってしまうので、それで出来が悪くなる。だから新しい土を入れれば、つまり土の肥料分が多いから良く出来ると考えているが、それはまるっきり違うのです。つまり肥料がだんだん多くなって、土が死ぬからとれなくなるのです。ですから肥料をやらないで、一つ作物を作れば、だんだん土の力は増えるのです。土の力が増えるという事は、土の肥料分が増えるというのと同じ事です。その解釈のしかたが非常に違います。結局肥料迷信です。肥料を本位にする迷信です。それを破らなければならないのです。(後略)
(御教え集19号 昭和28年2月25日)
「天地返しと共に客土」
自然栽培の事ですが、いろいろの報告や今までのやり方からみて、結論としては、この間中言った、つまり天地返しが必要ですが、それだけでは少しまずいところがあるのです。というのは天地返しをしても、壁のようになっている肥毒の層が、やはり壁土が混るようなもので、肥料壁の土が混りますから、初年度ではそれが影響するのです。ですから天地返しをすると共に客土をできるだけするという事が一番理想的です。これなら初年度から何割という増産になります。それで種に肥毒があるとやっぱり何んにもならないのです。よく農事試験場などで無肥料を試験してみて駄目だという事は、種に肥毒があるからで、それを知らないからです。それと、肥毒の壁があるからして、丁度麻薬中毒の人間に麻薬を止めさせるようなもので、一時馬鹿になってしまうのです。そのために種も土も肥料をやらないと馬鹿みたいになるから、それで結果が悪い、それで無肥料は駄目だという事になったのです。
(御教え集28号 昭和28年11月16日)
「客土について、その1」
「新潟の山間部の方は中々成績が上りませんで、水が冷めたいのと下が砂利になつて居りますので――」
悪いな。
「客土をさせて戴きますと宜敷いでしようか」
そうですね。石なら――今迄も同じでしよう。
「大体二石以下で御座います。肥料をどんどんやつて収つておりました」
そういつた、土が悪いから、肥料でも余計やらなければならないと言うので、普通より余計やつたんですね。それを抜くには、普通より余計かゝりますね。山なら、客土は楽だから、結構ですよ。そうして、肥料をやらなかつたら、馬鹿に良くなります。
(御垂示録4号 昭和26年11月1日)
「客土について、その2」
“田に客土をやる風習がありますが、之は差支へありませんでせうか。又、客土をやるにはどの様な土が宜しいでせうか。
“この客土っていふのがね、無肥料栽培のいゝ事をよく証明してるんですよ。客土っていふのは肥料を使はない処女地の事ですからね。大抵百姓は山の土を持って来ますが、肥料の為に土がやせてしまふから、未だ肥料の入ってない山の土を持って来るんですよ。所がね、今迄はどう理窟をつけていたかって言ふと、永年作物を栽培した為に土の養分を吸ひとってしまったからだ、と言ってるんですが、実はそうぢゃないんですよ。肥料をやった為に土を殺しすぎてしまったんです。実際この事なんか、いかに無肥料がいゝかって事をよく証拠立てゝるんですがね、それだから、客土をやる場合には、今迄肥料を使はなかった土ならどこのでもいゝですよ。
(御光話録9号 昭和24年)
「客土について、その3」
“客土の土の可否――
“客土の場合、肥料をやらぬ土ならどこのでもよい。肥料の為土を殺した所へ新しい土を入れたからよくなるのである。
(「客土」年代不明)
「客土した場合」
“空襲の時貴重品を仏間の下に穴を掘り埋め、余った土を馬鈴薯畠に入れました。其の場所だけ倍以上の大きなのが出来ました。如何なる訳で御座いませうか。御伺ひ申し上げます。
“肥料のある畠へ無肥の土を入れたから変った。つまり客土した訳である。薬を服まぬと女でも若々しい。薬を服むと萎びてくる。
(「無意識の客土」S24・6・7)