概論
8,各種症状と急所
8-④ 痒(かゆ)み
此注射を行った者は必ず多少の蕁麻疹発生を見るのである。注射後早きは一年位、普通二年三年、長きは五六年を経て現はれるものである。然るに、医療は蕁麻疹を治療する場合、カルシュウム注射を行ひ、一時は多少の効果はあるが、時を経て必ず再発するのである。元来中毒的症状に対しては、その中毒の原因である薬剤を用ふるに於て、一時的効果はあるもので、彼のモヒ中毒患者が、モヒによって一時的苦痛を免れるといふ事と同様で、これは誰も知る処である。
故に蕁麻疹は、薬毒が浄化作用によって、皮膚面から排除せられるのであるから、或期間苦痛に耐えて、放任しておいても治癒するものである。そうして蕁麻疹の症状は人によって種々あるが、何れも掻痒苦が伴ふから判り易いのである。又、アンチピリン中毒、或種の注射薬等に因る事もあるが何れも自然に治癒するものである。
次に、蕁麻疹に似而非(ニテヒ)なるものに、一種の発疹的病気がある。蕁麻疹の粟粒的なるに対し、之は粒状が稍々大きく、重症は豆粒大のものさへある。之は、軽症は局部的であるが重症は全身的に及ぶものもあり、掻痒苦甚しく、絶えず稀薄なる膿汁を排泄し、稀には、膿汁が局部的に集溜腫脹するものさへある。
そうして経過は頗る長期間に渉り、早きは半年位より、長きは数年に及ぶものさへある。最重症患者に於ては、苦痛のあまり自殺を想ふものさへあるといふ、実に怖るべき疾患である。そうして治癒後と雖も、多くは局部的に残存し、全治する迄に数年を要するものである。
此病原は全く陰化然毒であって、真症天然痘が急性であるに対し、之は慢性天然痘ともいふべきもので、種痘の為浄化を弱められたる結果である事は勿論である。故に、重症患者の最盛期に於ける皮膚面をみれば、天然痘に酷似してゐるのである。
「(中略)そうして病気に際し最も苦痛を現はすものは薬毒で、次が尿毒、次は然毒であるが、然毒は殆んど痛苦はなくただ痒みだけである。(中略)」
(「結核と薬毒」結正 S18.11.23)
「掻痒苦は痛みに比して侮り難い苦痛である事は誰も知る処である。原因は勿論薬毒、然毒及び食餌中毒の三種であり、一般に知られてゐるものとしては彼の疥癬及蕁麻疹である。此原因は主に前者は然毒後者はカルシュウム注射、ヨード剤等である。
又他の目的によってカルシュウム注射を行ふ場合も、時を経れば必ず蕁麻疹が発生するが、此病気は放任しておけば必ず治癒するのである。蕁麻疹にも種類があり、普通は無数の微粒が皮膚面に表はれるが、斑点、地図型等のものもあり、最初は紅色を呈するが、治癒するに従ひ黒色に変ずるのである。勿論紅色時掻痒苦があり黒色になるに従ひ掻痒苦は消滅する。之は疥癬も同様である。
次に、或種の注射及びアンチピリン中毒、魚肉中毒等何れも蕁麻疹的症状を呈するが、之等は一時的で軽きは一二日重く共数日にして治癒するのである。但しアンチピリン中毒のみは予後黒色の斑点を貽(ノコ)しそれが数年に及ぶものさへある。」
(「掻癢苦」天 S22.2.5)
「(中略)天然痘に於ける掻痒苦であるが、之は掻痒苦中の王者である。此病気の原因は薬毒の遺伝であって、之が浄化によって皮膚から排泄されるのであるが、治ってからも醜い痘痕が残るので人は嫌うのである。処が種痘によってそれを免れるが、之で然毒が消へたのではない。只排除を止めたまでであるから、残った毒は種々の病原となる。その著しいのが彼の疥癬である。之に罹るや掻痒苦甚だしく、症状も天然痘と些かも変らない。つまり真の天然痘が急性であり、疥癬は慢性であると思へばいいのである。」
(「薬毒(二)」医革 S28.)
《浄霊》 患部を始め、毒素の流れに沿って急所を発見する。