食と農
「食」について
7、牛乳について
「牛乳について」
(前略)次に、牛乳に就て、是非、注意したいのである。小児ならイザ知らず、青年以上になっても、牛乳を飲用する人があるが、是等は、実に、謬れるも甚しきものである。
何となれば、歯は、何の為に生えてゐるのであるか、勿論、物を咀嚼する為である。赤児は歯がない為に乳を呑むので、立派に歯のある者が呑むといふ事は、如何に天理に外れてゐるか判り切った話である。設(モ)し、大人が赤児と同じく、乳を飲むとすれば、赤児と同じく、立って歩かないで這って歩くのが当然ではないか。こんな判り切った事さへ判らない、文明人といふものは実に、愚かな者であると思ふのである。牛乳を飲むのは間違ってゐるが、食物の味、例へば珈琲に入れるとか又は、菓子や料理に使用する位は差支えないのである。日本人が牛乳を飲むと体力が衰へるのである。私は牛乳常用者へ、此害を説いて、飲用中止した為、健康を増加した者の、余りに多いと言ふより、殆んど全部といふ方が、当ってゐる事実を、茲に報告するのである。
(「七、完全営養食」医講 昭和10年)
(前略)次に、牛乳に就てであるが、牛乳は歯の未だ生えない嬰児には適してゐるが、歯が生えてからは不可である。それは歯が生えるといふ事は、最早固形食を食してもいいといふ事である。消化機能が発達して固形物が適するやうになったといふ事である。之が自然である。故に栄養と称して成人した者が牛乳を飲用するといふ事はその誤りである事は言ふ迄もない。
どういふ害があるかといふと、全身的に衰弱するのである。
曩に述べた如く、食物を余り咀嚼してさへ衰弱するのであるから、牛乳の如き流動物に於ては、より以上衰弱を来すのは当然である。成人者が牛乳飲用の可否に就て、私に問ふ毎にいつも私は、嬰児と同様の食物を摂るとすれば、その動作も嬰児と同様に這ったり抱かれたりすべきではないかと嗤ふのである。之等も学理に偏し実際を無視した医学の弊害である。(後略)
(「栄養学」明医一 昭和18年10月5日)
(「栄養学」明医二 昭和17年9月28日)
(「栄養学」天 昭和22年2月5日)類似
「牛肉と牛乳について」
(前略)第二に食物ですが、之も実に困るのであります。
肉食特に牛肉と牛乳がいけない。
何故かといふと、非常に血を濁すものだからであります。
然し、之等も強いてといふ訳にもゆかないので、或程度-患者の任意にするより致し方ないのであります。近来、医師により、肉食を不可とし、菜食を奨める人が相当多くなったのは、喜ぶべき傾向と思ふのであります。(後略)
(「治療士の心構へ」療講 昭和11年7月)