食と農

 

「食」について

 

 10-3、農家の食事

「農家の食事について」

  (前略)今一つ茲に注意しなければならない重要事は、近来農村人に栄養が足りないとして、魚鳥獣肉を奨励しているが、之も間違っている。というのは前述の如く、菜食による栄養は根本的で、頗る強力であるから、労働の場合持続性があって疲れない。だから昔から日本の農民は男女共朝早くから暗くなる迄労働する、もし農民が動物性のものを多く食ったら、労働力は減殺される。何よりも米国の農業は機械化が発達したというのは、体力が続かないから、頭脳で補わうとした為であろう。故に日本の農民も動物性食餌を多く摂るとすれば、機械力が伴わなければならない理屈で、此点深く考究の要があろう。
  右によってみても判る如く、身体のみを養うとしたら、菜食に限るが、そうもゆかない事情がある。というのは成程農村人ならそれでいいが、都会人は肉体よりも頭脳労働の方が多いから、それに相応する栄養が必要となる。即ち日本人としては魚鳥を第一とし、獣肉を第二にする事である。其訳は日本は周囲海というにみてもそれが自然である。元来魚鳥肉は頭脳の栄養をよくし元気と智慧が出る効果がある。又獣肉は競争意識を旺んにし、果ては闘争意識に迄発展する。之は白人文明がよく物語っている。白色民族が競争意識の為、今日の如く文化の発達を見たが、闘争意識の為戦争が絶えないにみて、文明国と言われ乍ら、東洋とは比較にならない程、戦争が多いにみても明かである。(後略)               (「栄養」結革  昭和26年8月15日)